「ものづくり白書」からわかる製造業の経営課題と必要な取り組みは? ~サプライチェーン強靭化に向けた現状と対策~
「サプライチェーン強靭化」。このテーマは製造業が継続を考える上で欠かせないことの一つとなりました。
自社内という枠組みに留まらず、関係会社と一緒に考え、安定した商品供給を実現させる必要があります。
最近お訪ねした企業様でもサプライチェーン強靭化を目的としたご相談が多く、今回は、「2022年版ものづくり白書」からわかる、製造業が今抱える経営課題と必要な取り組みについてお伝えします。
今回の著者:Business b-ridgeコンサルタント 塩見 拓
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社会情勢の変化と今後の事業継続に必要な取り組み
最近の社会情勢の変化はとても激しいと思いませんか?
2021年~2022年は、従業員がコロナに感染して工場の操業が止まったなど連絡が入ることもありました。国内が収まったと思ったら隣の中国では都市封鎖となり、ロシアのウクライナ侵攻が勃発しました。2年前には全く誰も想像できなかった状況です。
改めて、社会情勢の変化を具体的に振り返ってみましょう。
社会情勢の変化①コロナウィルス感染拡大・ウクライナ情勢・円安
2022年現在、経済活動は再開されていますが、新型コロナウィルス感染症の感染拡大懸念は、引き続き予断を許さない状況です。また、ウクライナ情勢の緊迫により、もともと上昇傾向にあった原油価格がさらに高騰し、エネルギーコストが上昇した結果、生産コストや物流コストの上昇に大きく影響をあたえています。
加えて、為替変動(円安)や世界的な需給バランスの変動により、原材料価格が高騰しており、製造するための人手や機械(半導体)の不足、生産するための部素材の不足が続いています。
事業に影響を及ぼす社会情勢は、非常に不安定な状況で、いつかサプライヤーからの供給が止まって、自社工場の製造に影響を与えることも実際に起こりうる話です。

引用:2022年版ものづくり白書(ものづくり基盤技術振興基本法第8条に基づく年次報告)
https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2022/index.html
社会情勢の変化②カーボンニュートラル対応
SDG’sの一つ、カーボンニュートラル(脱炭素化)がますますクローズアップされてきました。2021年に開催されたCOP26等、カーボンニュートラルの実現に向けた国際的な議論が進展・具体化する中で、産業部門のカーボンニュートラル及びその市場形成に向けた民間企業主導の取り組みが求められることになりました。
※COP26とは?
2021年10月31日から11月13日にかけて、英国のグラスゴーで開催された「気候変動枠組条約締約国会議」のこと。日本の岸田首相を含む約130か国以上の首脳が集結。
年限付きのカーボンニュートラルに賛同した国・地域の中で、日本は2050年までのカーボンニュートラル表明国となります。

引用:2022年版ものづくり白書(ものづくり基盤技術振興基本法第8条に基づく年次報告)
https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2022/index.html
変化した経営課題とIT投資の傾向
昨今のコロナ過における企業の取り組みで、チャットや会議ツール導入による社内コミュニケーション強化、Web会議やVPNを利用した働き方改革(ニューノーマル、テレワーク)は急速に進み、取り組みを終えたと考える企業が多くなってきました。その一方で、今後の重点課題としてビジネスモデルの変革が大きくポイントを伸ばしていることが分かります。
さらに、付随する課題として、迅速な業績把握(リアルタイム経営)、企業としての社会的責任の履行(CSR、SDGs、ESG)、サプライチェーンの見直し・強化なども小さくポイントが伸びています。
経営者の意識は、社会情勢の激しい変化に対応するための取り組みに重視してきていると考えられるのではないでしょうか。

引用:2022年版ものづくり白書(ものづくり基盤技術振興基本法第8条に基づく年次報告)
https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2022/index.html
傾向の変化から言えること
実際に製造業の企業からのご相談内容も上記に関連している場合が多く、「サプライチェーン見直し・強化」では社内業務を超えてサプライヤーや仕入先などの取引先を含めた供給網全体の可視化、「企業としての社会的責任の履行」では製品供給まで外部の委託先の情報も厳密な管理が必要になるなど、IT投資の対象が変化してきていることを実感します。
読者の皆さんもこれを機に、自社がどの経営課題を重要視しているか、社会情勢に合った取り組みをどのように行っているかを今一度見つめ直すきっかけにしていただければ幸いです。b-ridgeコンサルタントチーム 塩見 拓