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プロジェクトマネジメント 成功の鍵~要求の理解(2) コミュニケーション~

プロジェクトマネジメントで、要求事項をどのように明確化していくか、そのための7つの考え方を解説します。要求仕様段階で、コミュニケーションを軌道にのせて、要求を組み立てる仕組みを構想・構成する基本的な考え方です。先に弊コラム「プロジェクトマネジメント 要求の理解(1)」に述べた方法を実現するための、7つの考え方を解説します。

1.全体的な目標・方針の確認

プロジェクトマネジメント成功の鍵-全体的な目標・方針の確認コミュニケーション

お客様には多くの担当者がいて、それぞれご自分の専門分野、担当業務、考え方をお持ちです。要求仕様を取り纏める際には通常、各担当部門(担当者)とテーマ毎に打ち合わせを行います。その際のコミュニケーションの注意点は、個別の意見をそのまま採用すると必ずしもお客様全体のお考えに合致しているとは限らない事です。
お客様がお持ちの、プロジェクト・レベル、さらに会社レベルの全体的な目標・方針を、確認し、その目標・方針に向けた打ち合わせを行うことです。
たとえば、「生産量・生産効率の最大化」「可能な限りの無人化・自動化(例:ペーパーレス化)」「障害に強い製造ライン」「他の生産拠点との協力・連携」「人(環境)に優しい工場」「新人への教育や技術の伝承」などなど。その統一的な仕様の考え方を良く理解した上で、個別仕様に展開するよう心がけます。

お客様社内で事前により上位レベルの管理組織を用意し、そこで検討・確認のうえ優先度を付けて頂く事が理想です。実際には、仕様要求段階でITベンダー側もお手伝いして、お客様とご一緒に確認作業を進める事も多いのです。

2.お客様プロジェクト部門との協力

プロジェクトマネジメント成功の鍵-お客様プロジェクト部門との協力コミュニケーション

企業がどんなプロジェクトを始める際にも、必ずその計画・実行に責任を持つ組織を用意します。それは場合により、一時的なプロジェクト組織、既存部門の追加業務、新しい専門の部門などであったりします。そこでは、プロジェクト全体の方針・計画を立て、個別担当部門間の各種コミュニケーション管理を行い、また要員・予算を管理します。
システム案件の遂行に当たっても、お客様のプロジェクト部門とのコミュニケーションが最重要の課題となります。どんな会議でも、お客様のプロジェクト部門に出席のうえ仕切って頂くようにし、万一それが出来ない場合には事前相談・事後報告が必須です。ITベンダー側でも数多くの各種案件の遂行経験を持っていますから、お客様のプロジェクト部門に果たして頂きたい役割を助言・お願いしたり、場合によっては非公式に一部の業務をお手伝いする事もあります。「困った時にはプロジェクト部門に即ご相談する」事がコミュニケーション大原則です。

お客様によっては、全社的な利害調整を行う意思決定機関であるステアリングコミッティ(運営委員会)、プロジェクト支援業務を専門に行うプロジェクトマネジメントオフィス(PMO)、類似プロジェクトを全社横断的に計画・実施・管理するための上位部門、などを組織されている場合もあります。それぞれのプロジェクト部門の役割・権限などを良く理解して、定期的に報告・相談します。

3.打合せ参加者&決定ルートの明確化

プロジェクトマネジメント成功の鍵-打合せ参加者&決定ルートの明確化

お客様との個別課題の打合せでは、部門代表ではなく多数の部門関係者が出席される場合があります。その理由は、誰か一人が部門代表として出席して意見を出しても何か決定しても、後で他メンバーが「自分は聞いていない/了解しない」と紛糾する事態を避けるためです。すると得てして打合せは、様々な意見が百出するばかりで結論が出ないで終わる事になります。

しかし、これではプロジェクト活動が一向に進みません。そのため、事前にコミュニケーション計画を設定して、各会議体の目的、参加者と、参加者の役割を設定します。参加者には、決定できる権限とそれを周知・推進できる力が必要です。

4.同じレベルで書く事

プロジェクトマネジメント成功の鍵-同じレベルで書く

大きなシステム開発案件になれば、要求仕様の分量も膨大になります。すると、お客様側もITベンダー側も到底一人で対応する事は出来ませんので、対象機能毎に別々の担当部門・担当者を割り当てる必要が出ます。その結果、どうしても担当毎に仕様検討・決定のレベル(深さ/詳細さ/課題)が異なり、後になってその不整合が問題化する事になります。

それを避けるには、要求仕様として「何を」「どこまで」決めるべきかを最初にルール化して、各担当はそれに沿って仕様検討する事です。具体策としては、ガイドライン、定型フォーム、チェックリストなどの手段があり、また技術責任者やプロジェクト組織による内部レビューも効果があります。

5.誰にでも分かる言葉でコミュニケーションすること

非常に専門的な特定分野の要求仕様では、一部の担当者にしか理解出来ない概念・用語などが飛び交う事がしばしばあります。何しろお互い専門家同士ですから、当人にとってはそれで必要十分なのかも知れません。しかし、それではプロジェクト全体として良く分からない要求仕様になり、それが他の部分と整合性が取れているのか判断出来ない事にもなり兼ねません。

要求仕様は誰にでも分かる言葉で書かなければ意味がありません。私が良く冗談半分で言うのは「猿にも分かる仕様」という事です。たとえ誰が読んでも分かるように書く事、どうしても専門用語を使う必要がある場合には用語集を作り、意味定義します。

6.要求仕様=設計作業

 ウォータフォールのモデルでは、「要求仕様の完了」=「設計仕様の開始」となりますが、この両者を切り離して考えるのでなく、「要求仕様=設計作業」と捉えることで要求仕様フェーズをリードすることができます。 ウォータフォールのモデル
 お客様のご担当各位からは実に多種多様な要件が出されますが、それを全て正確に書き写すのが良い事だとは限りません。
 「全体的な目標・方針」と照らし合わせてお客様から要求の一貫性を引き出しつつ、設計フェーズ以降(機能、予算、納期)を念頭に入れて、要求の整理をリードするコミュニケーションが大切です。それによってシステム全体の統一性・整合性・実現性などが担保され、プロジェクトの最適解が見えてきます。 プロジェクトマネジメント成功の鍵-要求の整理をリードするコミュニケーション
 極端な事を申しますと、もし要求仕様で全てのプロジェクト作業が完結するのでしたら、お客様から出される多種多様な要件をそのまま正確に書き写すのが「良い要求仕様」に他なりません。しかし実際には、要求仕様を実現するための設計・開発・検証段階がその後に続きます。
 プロジェクト全体としての最適解を求める立場からは、全体的な統一性・整合性・実現方法などを描き、次のステップの準備を行います。 プロジェクトマネジメント成功の鍵-要求を組み立てる仕組みを構想・構成する
 お客様の表面の言葉を、そのままを鵜呑みにせず、その経緯、背景、目標・方針を確認し、要求を組み立てる仕組みを構想・構成する事です。まさしく、経験・技術・論理・創造力の発揮の場面です。

7.パッケージ適用の注意点

プロジェクトマネジメント成功の鍵-公平な眼で「FIT AND GAP(適合性検討)」を進める

今日のIT世界は、目的別・課題別パッケージの花盛りです。OS、文書/表/プレゼンテーション資料作成、メールソフトに始まり超巨大なERP/MRP/SCMに至るまで枚挙に待ちません。皆様方がお持ちのシステム課題をITベンダーにご相談された時に、今ではそのITベンダーが持っている何らかのパッケージを利用した提案が出されるのが普通です。通常、そうしたパッケージは類似の目的向けに特化して開発され多数のシステム構築実績を持つため、機能性、信頼性、拡張性、操作性などに非常に優れています。

それでは、そうしたパッケージを採用してシステム開発する事が、常に正解なのでしょうか? 極めて乱暴な言い方をしますと、法律・規則などの制約が強く機能が画一化し易い分野・課題などでは、それに特化して開発された実績の多いパッケージが強い威力を発揮するものと思われます。
それに対して、製造管理、制御システムなどでは対象ハードやお客様の考え方が千差万別であるため、必ずしも特定のパッケージが有効であるとは限りません。むしろ、柔軟性の高いパーツ集や開発キットの方が適している場合もあります。
お客様の立場でより良いシステム構築方法を探すためには、ITベンダーとも協力して公平な眼で「FIT AND GAP(適合性検討)」を進める事をお勧めします。

ITコンサルタント
佐野 優治
キヤノン、東洋エンジニアリング、YMP-iを経て現在はITコンサルタントをしています。主な経験分野は、電子機器制御、ラボオート(LA)、連続プロセス制御・監視、バッチプロセス制御・監視、自動車製造ライン、製造管理システム(MES)、医薬製造向け現場連携・SCADA、生産管理システム、など。根っからの「現場好き人間」で、設備⇔システム融合をライフワークとしています。
著者メールアドレス: sano.yuji@mbm.nifty.com (ご意見、ご感想などお気軽にお寄せ下さい。)

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